Outline
技術と市場の乖離を乗り越える
先代の「箸を作りたい」という想いと、金属3Dプリンターの導入をきっかけに、チタン製箸「銀鱗(ぎんりん)」の開発がスタート。クラウドファンディングで一定の成果を上げたものの、デザインの独自性やブランドとしての訴求力に課題が残り、事業拡張の壁に直面。加えて、BtoC市場における知名度・ノウハウが不足していたことや、高コスト構造という課題も顕在化していました。そこで本プロジェクトでは、「チタンといえば東京チタニウム」という企業イメージの向上を目指しながらも、事業と製品、両面からのサポートを行い、新たな市場の開拓を目指しました。
Approach
目的設定から始めるブランド設計
プロジェクト初期は「3Dプリンターを動かしたい」という技術的な要望が先行し、事業としての目的や評価軸が曖昧な状態でした。そのため、商品展開の末にどのような市場の開拓を目指すのかについて議論とレクチャーを行い、明確なブランド方針を提案・共有することから始めました。チタン製品メーカーとしての強みや世界観を生かしつつ、従業員が自社技術に誇りを持てるよう、社内の共通認識づくりも並行して進め、事業の方向性を統合的に整理していきました。
Process
試作と検証を重ねた事業構築
プロジェクトの初期段階では、事業目的の整理や既存製品の課題分析、ユーザー評価の棚卸しを行い、関係者の目線を合わせることに注力。その後は、価格戦略(収益モデルの検討)と製造技術の両面で検証を重ねていきました。製造コストが非常に高い中で適正な上代を設定することや、チタン特有の熱処理による曲がりの懸念、先端のくすみなど、表面処理の難しさに直面しましたが、多数の試作と評価を繰り返しながら品質と美観を両立させるための最適解を模索しました。

この事業で取り組んだこと
- ブランド方針策定と目的設定
- 既存製品の評価・改善点の抽出
- 箸デザイン案の開発
- プロトタイプ制作と表面処理検証
- 価格戦略・販売計画の立案
- 展示ブースの企画・設計
Design
技術を文化へ昇華するデザイン
Concept
「既存価値の拡張」
コンセプトは、同社が40年にわたり磨いてきた金属の精密加工技術に、3Dプリンターという新技術を掛け合わせ、「チタンの可能性を広げ、素材を文化へ昇華する」という思想に整理しました。「チタニウム×3Dプリンターで、食の新しい輪郭を。」というメッセージで、食卓にチタンの華やかさと特別な時間を提供する、テーブルウェアハイブランドとしての価値を伝えたいと考えました。日常の食卓に“少しの特別”をもたらす存在として、素材の価値を再定義しています。

Product
造形美で語るブランド
複数案から絞り込み、最終的には「渦潮」などのチタン製箸のデザインと、展示会用のパネル・ディスプレイレイアウトを制作。金型では製造できない3Dプリンターならではの自由な造形を活かし、高級感と独自性を表現しました。
「チタニウム×3Dプリンターで、食の新しい輪郭を。」というコピーにのせて、チタンという素材の新たな魅力とブランド価値を直感的に伝える設計としています。
Display

Comment
当プロジェクトでは、「機械を動かしたい」という発想から、「ブランドとしてどう認知されるか」という市場起点の視点へと大きく転換が図られました。約20種類のラフ案からプロトタイプを作成して、今回はその中から「渦潮」を採用いただきました。そのほか「祝い箸」をテーマとした3種も選定いただき、現在も検討が進められています。BtoB企業がBtoC市場に挑戦する際には、技術だけでなく“意味”や“価値の伝え方”を設計することが不可欠です。既存の強みと新しい技術を掛け合わせることで、他社には真似できないオリジナリティが生まれるということを実感したプロジェクトでした。
支援メンバー
- 大沼 勇樹
- 瀧脇 大典
- 齋藤 秀幸
Client
株式会社東京チタニウム
〒339-0072 埼玉県さいたま市岩槻区古ヶ場2-3-10




